長いこと楽器レンタルの仕事に携わっていますと様々なトラブルに見舞われものです。同業他社さんに実際あった酷い事例では、貸した楽器が返却されなかった上依頼者も行方知れずなんてことも。当社で経験した中でもここでは、機材が破損してとっても痛い思いをしたケースをいくつか紹介します。
時間が許せば、そんなことがあるんだ〜と読み流してもらえればと思います。
過電流〜真空管が飛んだ!
201×年、歳の暮れも近づきつつある12月上旬、企業様の社員慰労イベント、東北のある県の廃校となった体育館を貸し切ってのバンド演奏、爆音で演りたかったのでしょう。マーシャルの二段積みセパレートタイプのギターアンプとハートキーの4発キャビネットベースアンプを3日間の予定でレンタル依頼を受けました。
機材を引き渡した当日の夜、私の携帯が鳴りました。お客様からです。「両方とも音が出ない。電源が入らない」とのクレームです。そんなはずはない。直前に音出しチェックして引き渡した。もしかして車での長距離輸送中に振動で破損した?たまたま機材の寿命が来た?いや、二台同時になんてあり得ない。電源が入らない?これは…直感しました。過電流が流れたに違いない。そしてヒューズが飛んだ!
一縷の望みを託してそして確認のために試してもらいました。PA機材は別ルートで用意されていて、数台持ち込まれていたコンボギターアンプ等は生きているとのことでしたので、それに接続している電源コードに繋ぎ替えて、さらにそこの正常に動いているコンセントに繋いでもらいました。結果は変わらず電源は入らないままです。アンプ本体が故障か破損したのは明らかです。
さてどうしよう。原因はともあれお客様がレンタル機材を使用できないのが現実です。お客様も困っている…代替機材を持っていく決断をしました。現場に行けばより状況が見えるとの思いもありました。夜を徹して高速道路を走らせ、除雪車が行き交う雪道を目の前にした時は夜が明けてました。
現場の体育館のステージ上には機材が所狭しといくつも並んでいました。まずは新たに持って行ったアンプを入れ替え音出し確認した後、前日の状況を聞きました。そうして分かったことは、配電盤からコンセントを分岐する際に一つを1500Wに設定、そこに電源コードを差し込みアンプの電源をONにしたことでした。原因はこれでした。1500Wというのは15Aの電流(電圧は100Vなので)が流れることになります。ギターアンプやベースアンプ等のアンプ類は機種にもよりますが、13〜15アンペア以上の電流が流れると中の基盤保護のためにヒューズが飛ぶ仕掛けになっています。それでスイッチをONにした瞬間にヒュースが飛んだのですね。
お客様と共に状況、状態を再確認して修理に出すことを説明してその場を後にしました。事務所に帰って来た時はとっくに日が暮れた後でした。修理に出した結果は、マーシャルのギターアンプが真空管まで破損で交換、ハートキーのベースアンプがヒューズのみ交換でした。原因がはっきりしていたので幸い修理代はお支払いいただきましたが、丸一日費やしたうえ高速代とガソリン代が結構かかり、2週間以上かかった修理期間に同機材のレンタル依頼があったら商機を逃すことにもなりましたし、何とも痛い一日となりました。お客様は無事にイベントを終えられ、代替機にも満足していただき感謝のお言葉もいただいたのは幸いでした。
電源車が犯人?
過電流で破損した時例をもうひとつ。上記の事件よりさらに遡りること数年、今度は夏、そこそこの規模の野外イベントでの出来事です。出演者の一人からベースアンプの依頼を受けました。ステージ設営が終わる頃に現場に到着、間もなくリハーサルが始まるというのでベースアンプを設置、電源を入れ通電を確認、料金を受け取らなければいけないこともあり依頼者を待ちました。しかしこれが失敗の原因となったのです。電源車から調節繋いで分岐したコンセントに電源コードを差し込み電源を入れたままにしておいたのです。ふと見るとベースアンプのランプが消えているではありませんか。
えぇっ!?スイッチを入れ直しても電源が入りません。うろたえましたが幸いに次の現場で使う予定だったベースアンプが車に積んであったので、慌ててそれを取りに行ってリハーサルに間に合わせることができました。その後現場に居合わせたPA屋さんから、過電流が流れたようだと聞きました。それを示すメーターが振れたというのです。安定化電源を使用していたのでPA屋さんは無事だったとのことでした。電源車の担当にクレーム入れるもラチあかず事の真偽を確かめようにも確たる証拠もなく、次の現場の時間も差し迫っていたので泣くしかなくなりました。
それ以来、中規模以上の発電機を使う現場では必ず安定化電源、パワーディストリビューターを使用することを鉄則にしています。そして使わない機材は電源を切ること。これが肝要だと実践しています。
酔って不注意、乱暴で破損…
グラスのアルコールがこぼれた
結婚式の二次会や様々な宴会場で時折目にする光景です。飲みかけのグラスをギターアンプ等、楽器の上にちょいと軽い気持ちで置いたことありませんか?これで痛い思いをしたことがあります。
回収の時は気づきませんでしたが、車から降ろして倉庫にしまう時うっすらシミのようなものがあるのに気づきました。嗅いで見るとアルコールの臭いがします。こぼしたんだ!急いでチェックしたところ幸いに通電し音が出ることを確認しました。ホッとするのも束の間、急いで外側だけは念入りに拭き取り中の状況を確認するために修理に出しました。基盤に異常はないとのことで清掃だけを依頼、でもこれだけで万単位の費用が必要です。現場で指摘できなかったことで後の祭り、これも痛かった経験です。
マイクのグリルがベコンと
回収時、テーブルに置いてあったマイクをしまおうとすると、マイクのグリル部分(丸くなった網目金属)が半分近くつぶれているのを発見しました。振り回してぶつけたか床に落として踏みつけたのでしょう。その場でパーティの幹事さんを探して現状を確認してもらうと同時に、依頼者様に費用弁償の必要を説明しました。責任は明らかでしたのでそのマイクを新品相当額で買い取っていただくことで話はまとまりました。利用規約に明記しており同意もされていることなので揉め事と言った事態にならなかったのは運が良かったです。
以上レンタル機材が破損した経験を書いてきましたが、もちろんそう何度もあることではありません。基本の知識不足やうっかりが大事を招くこともあるということですね。私自身がやらかしたヘマモないわけではありませんがまた書く機会があるかと思います。お読みいただきありがとうございました。